日本の教育では英語が話せるようにならないといわれ続けていますね。
これについて、早く始めればいいとか、授業を英語だけで進めるとか、ネイティブスピーカーを講師として採用する、などの対策がいわれて実際に実施されています。
けれども、昨年導入された新しい教科書や授業の様子を伝え聞く限りではあまり実情は変わらなさそうです。
英会話がスムーズにできない原因は主に以下の三つです。
- 語彙力
- 文法の知識
- 経験
上記が不足しているから話せないのです。
私の考えでは、「学校の英語で読み書きばかりしているから」というよりも、語彙が圧倒的に足りないことの方が大きいように見えます。
というのも、通訳の学習をしていたときの練習で感じたことですが、知らない言葉は口から出てこないのです。(当然ですね)
翻訳や通訳をしているとよくあるのですが、「英語話せるんでしょ?これも全部英語にできるよね」と、お手並み拝見とばかりにいきなり英語力を披露することを要求されたりします。
しかし、例えば自分が知らないものについては特に何も言えないわけです。自分が知らないことについては話せるわけもありませんし、例え自分の言いたいことがあっても、その分野の英語に精通していなければ話せるわけがありません。
圧倒的な語彙力があってこそ、なんでも話せるわけです。
それでは、ネイティブとノンネイティブの語彙力の差はどの程度なのでしょうか。
どのくらいの語彙があれば、会話できるようになるのでしょうか。
知りたいですよね!少し調べてみました。
ネイティブの語彙力
"The Economist"というサイトで以前に調査した結果が示されていましたのでご紹介します。
- ・Most adult native test-takers range from 20,000–35,000 words
- ・Average native test-takers of age 8 already know 10,000 words
- ・Average native test-takers of age 4 already know 5,000 words
- ・Adult native test-takers learn almost 1 new word a day until middle age
- ・Adult test-taker vocabulary growth basically stops at middle age
- ・The most common vocabulary size for foreign test-takers is 4,500 words
- ・Foreign test-takers tend to reach over 10,000 words by living abroad
- ・Foreign test-takers learn 2.5 new words a day while living in an English-speaking country
- Lexical facts | The Economist
日本語訳
・受験者のうち成人ネイティブスピーカーの多くは、20000語から35000語知っている
・普通の8歳のネイティブスピーカーはすでに10000語知っている
・普通の4歳のネイティブスピーカーはすでに5000語知っている
・成人のネイティブスピーカーは、中年期(45~60歳※Oxford learner’s dictionaryより)において一日におよそ一語の新たな言葉を学ぶ
・中年期を過ぎると基本的に語彙力は伸びない
・外国人受験者の最も一般的な語彙数は4500語
・海外在住の外国人受験者は10000語を超える傾向にある
・英語圏の国で暮らしている外国人受験者は、一日に2.5語の新たな言葉を学ぶ
すごいですよね、ネイティブは2万~3.5万語も知っているのです!
英検1級の合格に必要な語彙が1万数千程度ですから、まともに話せるようにと考えたら2倍の語彙が必要です。
よく英検1級でもTOEIC満点でも話せない人が多いのはなぜか、と言われますが、当然ですね。
むしろ、1万語ほどの語彙があって上記の試験で合格したりいいスコアが取れているのであれば、後は経験だけですし、話せるようになるまではそう遠くはありません。
日常生活であれば難なくこなせるでしょうし、ビジネスであっても辞書があればなんとかなりますね。
日本人の語彙力
一方、日本人の語彙力はどうでしょうか。
先ほどの調査では、4歳児ですらすでに5千語の言葉を知っているようですから、当然そこは越えていかなければなりません。
小学校で学ぶ単語数
600~700
中学校で学ぶ単語数
1600~1800
高校で学ぶ単語数
1800~2500
合計 4000~5000語
英検2級(高校卒業程度)に必要な語彙が5000語くらいなので、まあこんなものかなと思います。
まじめに授業を受けて、きちんと単語を覚えてきたとしてようやくネイティブの4歳児と同等の語彙力です。
ちょっと旅行する分には何とかなると思いますが、国際的に活躍する人材がなかなか出てこないのは当然といえば当然ですね。
先進国でありながら世界の英語力ランキングで112か国中78位という圧倒的な低ランクのもうなずけます。(2021年、EF調べ)
それでは、シンガポール(4位)、フィリピン(18位)などのほかのアジアの国の人々が英語を話すことができるのはなぜでしょうか。
英語が話せるアジア圏の国
英語が話せるアジア圏の国っていったいどうなってるのかな?と思ったことはありませんか。
参考までにフィリピンとシンガポールについて調べてみました。
シンガポールの場合
シンガポールの学校は英語で教育をしており、義務教育の小学校の間から英語を使って生活しています。
シンガポールでは,1966年に2言語教育政策が導入され,現在シンガポールの学校では英語で授業が行われています。一方でシンガポールは様々な異なる民族の人たちが生活していることから,それぞれの民族のアイデンティティを尊重するために,それぞれの母語(華人系は中国語,マレー系はマレー語,インド系はタミル語など)を第2言語として学べるようになっています。そのためほとんどのシンガポール人は,英語だけでなく,母語である中国語,マレー語やタミル語を話すことができます。小学校卒業後は,第3言語として日本語,フランス語,ドイツ語,スペイン語を学ぶ機会が与えられることもあります。
上記のような環境で育っていれば、バイリンガルは当たり前になりますね。
マルチリンガルが多く育っても全く不思議ではありません。
実際に生活するうえで英語でのコミュニケーションをとる必要に迫られているのです。
フィリピンの場合
フィリピンでは、100を超える言語・文化・民族のグループがあり、母語よりも共通語としての英語での教育を望む声があるそうです。
実際の生活の面でも、国の発展という面からみても、英語という共通語を利用する方が理にかなっているということなのでしょう。
幼稚園から(!!)の英語教育が盛んなようです。まずは「母国語から~」と悠長なことが言えるのは日本が恵まれている、日本語だけで生きていけるという世界でもまれな環境にあるという証拠ですね。
78位も納得です。
参考
フィリピンの教育事情に関して|CEC海外ボランティア (cecj.net)
(キッズ外務省)世界の学校を見てみよう!:フィリピン共和国|外務省 (mofa.go.jp)
結局のところ、いずれの国でも生活のために必要であり、世界と戦って国を豊かにしていくため、個人の幸福を追求するために頑張って教育しているのがわかりますね。
ちなみにマレーシアやベトナムも英語力ランクは日本より上です。
まとめ
日本の英語教育があまり効果を示せない理由がざっくりとですがわかってきましたね。
上記の内容だけが要因とは言えませんが、結構語彙力の問題は大きいです。
語彙力には受容語彙(読んだり聞いて理解できる単語)、発信語彙(文章を書いたり、会話で実際に運用することができる単語)とがあり、発信語彙は受容語彙のおよそ半分とされています。
つまり、5000語学んで覚えても、使えるのは2500程度ということです。
これではコミュニケーションどころの話ではありません。話せないのも納得です。
日本という国を発展させていく、世界と戦う人材を、と考えるなら、本来は高校卒業までに英検1級レベルに到達すべきだといえます。
とはいえ、1級というと相当に難しいですから(日本人にとって英語習得が難しい理由はまた別にあります)、当然、全員がそこまで到達できるわけではありません。
できるこだけでもチャレンジさせるように授業をしてあげればいいのですが、なんせそこまで教えられる教師がいませんし、全員が一定の学力水準に到達することを目指すという現在の教育ではおそらく到底無理な話なのだと思います。
できる子もできない子もいっしょくたにして標準の範囲内にとどめておくような教育となっていますから、できない子もできる子も、今のところは外部にお金を払ってでも能力を伸ばしていく以外の選択肢がありません。
小学生の間に英検3級まで、中学生の間に2級レベル、高校で1級レベルを目指すのが本来の正しいレベル設定だと私は考えています。
子どもたちの将来を考えるのであれば、少なくとも高校の間に準1級は必要でしょう。
記憶力が少しずつ高まっていく小学校の中学年くらいから始めると小学校のうちに早い子で3級まで到達できます。
英語学習は早め早めがよさそうですね!!